自然エネルギーを“ 楽しむ” ~ソーラー竹ランプづくり~(岩川 貴志:MailNews 2016年6月号)

※ この記事は、KIESS MailNews 2016年6月号に掲載したものです。

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いまさらではありますが、昨年の夏のお話です。

 

楽しいエネルギー研究会

このMailNewsでも活動報告を掲載しているアズワンコミュニティ鈴鹿の有志の人たちと、定期的に「楽しいエネルギー研究会」という集まりを開いています。

研究会の主旨を一言でいえば、その名の通りエネルギーを“楽しむ”こと。太陽光発電を手作りしたり、里山で炭を作ったり、メンバーが普段やっていることや新しくチャレンジしたことなど、色々な話題を持ち寄って話し合い、そこから産まれた新しいアイデアをみんなで形にしてみる。そんな活動を、2年近くボチボチと続けています。

そんな「楽エネ研(たのえねけん)」で一番大事なのは、とにかく楽しむこと。失敗しても落ち込むのではなく、それをネタに笑い話にしてしまうことです。そうしているうちに少しずつ、なんか面白そうなことやってるなと、周囲の人たちも関心を持ってくれてた…のか好奇の眼差しで見られているのか判りませんが、少しずつ楽エネ研の存在が認知されていっているようです。

楽エネ研のなかで、私はおもに太陽光発電を担当しています。過去にMailNewsでも紹介したミニ太陽光発電の取り組みを応用して何かできないか、常々考えています。京都や三田でワークショップを開いているお手軽サイズのミニ太陽光発電を、もう少しコストもお手軽にできないか試行錯誤してみたり、アズワンコミュニティの拠点である「鈴鹿カルチャーステーション」のカフェスペースで、携帯電話のソーラー充電スペースを設計したりしています。

 

太陽光発電とアートランプ

楽エネ研のメンバーの一人に、竹を使ってアートランプを作っている青年がいます。地元の里山で伐った竹を乾燥させ、小さな穴を無数に開けて紋様をつくり、中で明かりを灯すと、とても素敵な光を放つランプになるのです。

そんな竹ランプですが、普段は中にキャンドルを入れたり、あるいはコードを引き込んで白熱電球を入れたりして明かりを灯しています。これをどうにかして、昼間に太陽光発電で充電して、夜になったらLED電球で灯りをともすようにできないか? という話になったのが、昨年の1月ごろのことでした。

そこから数ヶ月の試行錯誤を重ね(とはいえ、やはり楽しみながらボチボチとです)、楽エネ研プロデュースによるソーラー竹ランプが完成しました。我々が製作するのはあくまで“アートランプ”です。よって主に美観重視のため、以下のような点に苦心しました(もちろん、楽しみながら苦心してます)。

  • 室内で気軽に置けるサイズにし、パネルやLEDなどの部品はすべて竹のシェード部分と一体化させる。
  • 部品は、竹の上に着脱可能なアタッチメント式に。
  • 竹の中で、配線が透けて見えないようにする。
  • LED は電球色といっても白っぽい光の製品が多いが、なるべく暖かみのある色合いのものを探す。

 

ソーラー竹ランプづくりワークショップ

そして昨年8月、アズワンコミュニティ鈴鹿の「街のはたけ公園」にて、このソーラー竹ランプを自分たちで作ってみよう、というワークショップを開催しました。猛暑のなか、野外でのイベントにもかかわらず10組近い方が参加してくださいました。

自分たちで作るといっても、何もかも全て参加者にやってもらうのは大変なので、ワークショップ本番ではドリルを手に、竹筒に穴を開けて好きな模様を作ってもらって、希望者にはこちらで事前に用意しておいたアタッチメント(ソーラーパネルやLED電球などがセットになったもの)をお渡しすることにしました。よって、私は当日その場にいただけで何もしていないのですが、参加者の皆さんがデザインを思案しながら竹に穴を開け、完成したランプにアタッチメントをのせ、初めてスイッチをオンにしたときには、皆さんと一緒に歓声をあげながら喜んでおりました。

 

“魅せる”適正技術

自省の意味も込めつつ、常々思っていることなのですが、KIESSも活動の柱の一つにしている「適正技術」を、実際に自分で形にしてみようとすると、どうしても完成するのは無骨で、シンプルな機能美…にも程遠く、お世辞にも洒落ているとは言えない外見になってしまいがちです(単に私の美的センスが致命的なだけかもしれませんが…)。

果たすべき機能を果たしていれば見た目なんてどうでもいい、というのも一理あると思います。しかし、適正技術を「広める」とか、そもそも知らない人に「関心を持ってもらう」ということを視野に入れると、一目で人の心を惹きつけるような「造形美」を兼ね備えていることも重要ではないでしょうか?

とはいえ、美的センスというのはなかなかトレーニングで身に付くものではありません。今回のように、普段から竹を使ったアートランプ作りをしている彼らのような“魅せる”ものを創り出す人たちとコラボレーションさせてもらうことは、実はとても意義のあることなのです。

 

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(いわかわ たかし:KIESS研究員)

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