鈴鹿コミュニティ活動の展開(片山 弘子:MailNews 2014年7月号)

※ この記事は、KIESS MailNews 2014年7月号に掲載したものです。

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持続可能なコミュニティづくりカレッジの開催
~持続可能性は、人が最もリラックスした状態でお互いに存在しあえる、そんな中にあるもの~

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第1回 5月16日~18日、第2回 7月19日~21日と、北九州と大阪から、それぞれトランジションタウン活動やコミュニティづくり活動を推進している参加者をむかえて一緒に検討を続けました。

私自身も、KIESSで学び、「まず足元に持続可能な暮らしの実態をつくること、そして各地に、それぞれの条件に応じた多様な持続可能なコミュニティが誕生し、モザイクのように繋がっていきあうことで、地球という自然環境に人間として調和していけるだろう」と、個人から地球につながるそんな壮大な方向性に理を感じていましたが、次にその理念と方向性をどこからどう実現していけばよいのか、はたまた実際可能なことなのかどうか、それを検討したくなってアズワンコミュニティにここ4年間を暮らしながら、コミュニティの状態を観察しながら考えてきたと思います。

その持続可能なコミュニティとは実際どんなものだろうか?

そしてどう創れるんだろうか?

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アズワンもまだ泥臭く、いずれ美しさやきれいさも実現できたらなあと思う一方で、それでも短い間にも積極的な変化が続いて、たとえば南伊勢町のMさんから伝統の技術を学んで炭焼き窯が出来、窯には地元の人たちがやってくる、炭の原木を探すうちに、鈴鹿市の協力で鈴鹿市内の里山全体から原木の供給が可能になった。地域通貨を試みて止め、こんどはギフト経済?ファミリー経済?の試みなど、やりたい人が主体的に活動しながら連携しあって、思いがけない新しい展開が続きます。それで、ついそうした表面的な成果に目が行きがちになるわけですが、いまはそうした変化を生み出す環境条件に注目したいのです。

コミュニティ—その実態は、人同士が関わって暮らしを作ること、つまり人と人の関係であることとしたら、関係をつくっていく対話の質によって、社会の柔軟性や持続可能性が大きく影響されることにもなります。技術や方法を適切に組み合わせ、社会システムとしても持続可能性に近づける方法を創出していくためにも、それを可能にするお互いの関係性をどう育てるか。

持続可能性、あるいは循環共生の文化という、この現代社会にあってはほとんど体験しにくかったものを実現しようとするときに、本当に話し合えるかどうか。

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すぐには解決できないことがあったとしても、話した内容についてお互いに満足を感じ、信頼を感じられているだろうか。お互いの意思や気持ちが十分に正確に伝わり、相互理解が進んで、相互の関係の中で課題解決できるようになるには、それぞれ、まず心底、安心してお互いの気持ちを聴けたり言えること、理解しあって満足して生きやすくしあえる環境かどうかが問われそうです。

逆に、気遣いや遠慮という方法を取らざるをえないような、もっと言えば、うかうか正直にはいえない、まずは身を守ることにエネルギーが必要な状態に置かれている場合(現代社会では、幼少期からこういった環境で育つしかない場合がほとんどですが)には、十分な検討がお互いの間でできないので、どれほど理想を掲げてパラダイムの転換を言葉で叫ぼうにも、現場でそれが実現できない状態に陥ります。

つまり持続可能性は、人が最もリラックスした状態でたがいに存在しあえる、そんな中にあるものではないでしょうか。

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7月の第二回では、コミュニティづくりの経過の中でおきた実際の失敗例を、当事者同士の4人の男女で語り合ってもらいました。そしてその一人は私のパートナーなので、彼の事例はみんな私に関することでしたが、受講者&スタッフ一同、涙を流さんばかりに大笑いの連続。なぜなら、対話が出来なくなるときの実際の場面は、人の事例ほど滑稽この上ない、そして誰にも思い当たる日常的なことばかりだからです。

同時に、普通であれば、見逃しがちな心の澱を、ありのままに当事者同士が語り合う姿は、シンプルで誰にもわかりやすく、しかも文句なくすがすがしい。当事者同士で、その時実際どう思っていたか、なぜそう思うようになってきたかと、顔を見合わせて語られるうちに、誰もがわがことのように思わず引き込まれ、心が動いていきます。

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いったん対立してしまえば、しこりが残って、本当は近づきたくないが、社会人として表面を取り繕ってうまくやっていこうとする。心底話し合うことが難しい。そんな経験がほとんどなわけですが、目の前で、「こんな風に溶け合って考え続けて行けるのかな」、と分け隔てない態度で何でも聴いたり言ったりする人たちに出会うと、人間関係にまつわる固定観念が、自分の中でガラガラ崩れていく感じ。もしかしたら、こんなに楽に自分も生きられるかもしれないなあと考えさせられる。私自身もアズワンに来て初めてそんな人たちに出会い、そんな出会いに勇気づけられて、自分も探求したくなった、その経験から、このプログラムの中に取り入れてみたわけです。その結果は、やはりかなり効果があったように感じました。

楽しく軽い空気の中で、自分に引き付けて人間関係を見直す。反省的にならないで調べる感覚、そんな空気の体感と、安心している自分の状態を味わうこと。それ自体がこのカレッジの価値かもしれないと、感じています。

そんな空気に触れると、初めての人でもすぐに寛いで素直に反応を始めていく、それももしかしたら誰にも備わっているものなのかもしれませんが、改めて人って面白い、可能性を感じるこのごろです。

アズワンで検討してきたことを手掛かりに、合宿形式の教育プログラムを試みましたが、検討を加え、心底寛ぎながら楽しく検討していける内容に育ててみたいと思っています。

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(かたやま ひろこ:NPO法人鈴鹿循環共生パーティー理事)

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