鈴鹿コミュニティ活動の展開(片山 弘子:MailNews 2016年2月号)

※ この記事は、KIESS MailNews 2016年2月号に掲載したものです。

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人のための会社をつくろう
~持続可能な経済にむけて、第2回経営者カレッジから~

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お金本意の環境に囲まれた中でも、一人一人を尊重しあう、そんな組織や会社が出来るでしょうか?

上下なし、責任なし、罰則なし、何でも話し合えるお互いになり合っていくことで会社が生き物のように、おのずと成長が始まっていく??

参加者レポート:http://jssc358.wix.com/college#!keieisha1/c9cr

良いも悪いも無しに、おふくろさん弁当の設立から今日にいたる経過を、ありのままに聴いているうちに、参加者の中から、「イーハトーブの地に、何でも安心して話を聴き合える仲間を作っていこう!」と声が上がりました。

経営と従業員、リーダーとチーム、という図式から解放された、まるで子供のような、嬉々として遊ぶごとくにやっている—経営カレッジでお互いの本音トークや、課題がどこにあるのか検討した中で、みんなの感想もまとめてみると、面白い面白い。リーダーとして経営者になろうとしたとたん、経営者でなくなっていく図式がありそう。

【感想】M・Y(30代、青果卸会社経営)

資本主義社会の中での“会社”と、人が幸せを感じる組織とは私は別物と思っていた。

おふくろさん弁当はアズワンコミュニティの中で営業しているから成り立つものであり、私の経営している会社には参考にはならないのだろうと思っていた。しかし『人』に焦点を当てて『人の為』の会社を考えた時、それはどこでも関係なく、人のいる所であればどの地域どの組織でも「人の為の会社」に出来るのだと強く思った。

社員一人一人が、携わる人の誰もが自主的に(本当の意味で主体的に)仕事を考え、楽しく働ける気風を作るには、それは企業理念を壁に張り出すことでもなく、社長のトップダウンで動かすものでもなく、社員一人一人がお互いに何でも言い合えるような関係性を構築するのがいいと思う。植物が自分の力で成長しようとするのと同じく、人も自分で成功する、成長したいと思っている。社員のその成長しようとする気持ちを信じて、自分が今経営する会社でも、出来るところから一つずつルールや規制、罰則を少しずつ減らしていき、お互いを縛ることの無い様な繋がりを作っていきたい。

それにはまず私、自らが自分の心を開き、素直に社員に自分の思っていることを話し、また社員の話している言葉のその奥の気持ち、更にその奥にあるものを推し量かりながら話を聴くようにしたい。

業務や仕事上のやり取りだけに囚われずに、社員を「人」として改めて認識し、向き合っていきたい。その一歩を踏み出せれば、おふくろさん弁当の様な「人の為の会社」に近づいていくのではないか。2泊3日の経営者向けカレッジを通して私は確信した。

人の為の会社が全国に広がっていけば、本来やりたくない業務、社会に対して良くない影響を与える企業も減っていき、世の中が自然に良くなり、人が幸福を感じられる社会が実現していくのかもしれない。

「誰もが幸福を感じられる社会」それは夢物語ではなく、再度強く確信をした。岩手に帰ってからのことを考えると楽しみです。

 

COP21とGEN(グローバル・エコビレッジ・ネットワーク)
~2020年までに化石燃料の要らないコミュニティになりうるだろうか?~

2015年11月30日から12月11日まで、フランス・パリで開催された気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)の締約国会議のオフィシャルゾーンと、NGOゾーンの2会場で、グローバル・エコビレッジ・ネットワーク(GEN)は、世界60か所のコミュニティを紹介し、コミュニティをベースにした未来への社会づくりの提言を行いましたが、アズワンコミュニティも、地球規模の人類存続にかかわる問題を解決する具体的な提案として紹介されました。

2016年1月号のGENニュースレター(世界12,000部配信)では、ニュース前文に続く特集「化石燃料の要らない未来」の冒頭で、再度アズワンの取り組みが紹介され、世界各地の気候変動とそれに伴う難民問題に、コミュニティベースの活動解決の道につながる事例として問題提起をしました。

原文:Could our community be fossil-free by 2020?
http://gen.ecovillage.org/node/8409

【日本語訳】私たちは、2020年までに化石燃料の要らないコミュニティになりうるだろうか?

人間にとって、幸福とは何でしょうか? アズワンコミュニティは、すべての問題は同じ根から立ちあがる、分けることのできないものとしてとらえ、人間と社会の本質について探究しています。人間性の探究と同時に、自然と調和しながら人間が幸福に生きるための社会の本質について、2000年の終わりから探求してきました。

はたして私たちは2020年までに化石燃料から解放されるという夢を実現できるでしょうか?

日本のような高度工業化社会に生きる私たちにとっては、単純に「YES」と答えることできません。アズワンコミュニティは、最初の10年間を、私たち自身の心の状態に焦点を当て、なぜ私たちが孤立化し物質的繁栄を支えているのか調べてきました。コミュニティから独立した「サイエンズ研究所」を設立し、私たちの試行錯誤について、ただ問題をひっかいてほじくりまわすことに終わらないで、科学的な研究となるよう、何がそのような心の状態を生み出しているのかを探究してきました。

私たちは資本主義という巨大な社会システムからどう自由になり得るでしょうか?

人間と社会の事例研究をベースに、鈴鹿市内のごく普通の街並みの中に境界線のないオープンなコミュニティをショーケースとしてつくることを通して、私たちは一つの持続可能な経済モデルをつくろうと試みてきました。街の中にいながらお金からの完全な自由を目指そうとしてきたとも言えます。

2015年11月現在、コミュニティスペースJOYの4度目の試行中で、75人が参加し、食糧やツール、道具をシェアし、設備やエネルギーの集中利用、再生とゴミゼロのライフスタイルや実践を促進させています。その究極の目的とするところは、都市生活者として生きながら、あらゆる資源の不公正な配分を避けるところにあります。それぞれ思いのままに街で暮らしながら、見えるものも見えないものも、物も頭脳も技術や能力、知識などあらゆるものが、心から提供したい人から使いたい人の所に、何の返礼も報酬もなく自由に行きかう。太陽光発電、太陽熱温水器、雨水タンク、エコロジカルトイレ、伝統的な炭焼き技術と炭焼き窯づくりなどを実践しています。

しかしコミュニティスペースJOYはそうした個々の技術以上に、食料とエネルギーの地産地消を地域の人々とつなぐステーションとして機能しています。近隣の農家の人たちは、彼らの耕作しなくなった土地、トータルで6.1エーカー(約2.5ヘクタール)を私たちの米や野菜作りに提供してくれており、そこで無理のない農法で生産していていることが結果的に鈴鹿市における土地の回復を促進していくことにつながっています。エコフットプリントも日本平均2.8の半分を下回る、1.2を実現するようになりました。

気候変動の最近の状態と、私たちを取り巻く近隣の条件が、新しい仕事の機会を提供してくれるようになりました。私たちの経営する弁当屋はここ数年で特に町で人気が出てきましたが、1日平均1,000食の手作り弁当が、10分以内の距離から直接届くコメと野菜を使って提供できるようになりました。これは結果として土地の健康状態を向上させ、土地への栄養素や水の循環の回復、モノの移動にかかる化石燃料の消費を削減し、売れ残った弁当をコミュニティスペースJOYに持って行ってコミュニティメンバーの食事に毎日提供するという方法でゴミゼロのマネージメントにつながっています。このようにして、顧客にとっての買いやすさと、持続可能な経営の両面にとって適切な値段が実現されています。

しかしながら、2020年までに化石燃料がいらない状態になるには、もっとダイナミックな努力が必要です。そこで2010年以降、私たちは「エコ・ステーション」としての活動を開始しました。そこで環境問題の解決につながるミーティングや学びの機会を提供し、街の人々とコミュニティ生活との間に相互理解が図られ、同時に環境問題など諸々の専門家、市議会議員、地域の人々とコミュニティメンバーの間により強力なリンクが生み出されることにつながっています。

また、地域と伝統的な知恵やスキルが一つに合わさって炭焼き窯づくりとして実を結びました。72歳になる南伊勢の右田さんから伝統的な方法を学び、2013年の初夏に右田さんを鈴鹿に招いて、鈴鹿市の里山でつくろうとしました。ほぼ完成間近という時に、通常では考えられないような大雨に襲われ、2013年9月に崩落しました。私たちが再び建設を始めようとした時、近隣の人たちと鈴鹿市が情報を提供して私たちを助けてくれました。地域の人たちは、私たちの工事が再び始まった時、土や300枚以上の古い屋根瓦を防水のために提供してくれるなど、地域の人々にとってはそれまで「価値のなかった土地」に具体的な援助の手を差し伸べてくれました。市の広報誌が炭焼き窯の情報を市民に知らせてくれたことで、持続的な経営に必要な炭の原料となるナラや雑木が、鈴鹿市内の放置されていた山林から届くようになった。その一方で、炭を使うという伝統的な文化や暮らし方が近代的な街の暮らしの中に浸透し始めています。

年間3,500人をこえるエコビレッジ作りを切望する人たちが、コミュニティの暮らしを学び、体験しようとして教育プログラムやスタディツアーに参加しています。また、客観的な指標や観点を備えるために、環境問題の専門家と協力しています。その一人、ドルトムント大学のEkhart Hahn博士はドイツでの経験から、エコステーション活動のような様々なアイディアをシェアして、活動内容が独善性に陥ることを避け、持続可能性が加速するように協力してくれています。京都大学名誉教授 内藤正明氏は、心の状態から社会システム、運営方法まで、アズワンの実践例から、新しい社会の全貌を学び研究することには価値があると述べています。

トランジションタウン活動、非暴力コミュニケーション、セブンジェネレーションの「Change the dream」チーム、そして多くの市民がアズワンに集まってくるようになりました。お互いから学び合うための安全で快適な空間を用意しながら、私たちは日本に化石燃料の要らない状態を実現するよう、協力して探求していこうとしています。

 

(かたやま ひろこ:NPO法人鈴鹿循環共生パーティー理事)

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