鈴鹿コミュニティ活動の展開(小野 雅司:MailNews 2015年7月号)

※ この記事は、KIESS MailNews 2015年7月号に掲載したものです。

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梅雨の合間の晴れた日を狙って、SUZUKA FARMの若者達はジャガイモ収穫にいそしんでいます。韓国、ブラジル、岩手から来ている若者も混じっているのは、ただ農の体験をしたいからではありません。

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コミュニティづくりや自分の生き方を学ぼうとする人たちがたくさん来ています。

今回は、学びの場としてのアズワンコミュニティということで紹介してみたいと思います。

 

コミュニティづくりの学び場として ~第三期「持続可能な社会づくりカレッジ」開催

持続可能な社会づくりのベースは持続可能な人間関係にあるという視点で開催されている「持続可能な社会づくりカレッジ」。5月~7月で第三期が開催され、東京、横浜、名古屋、九州などから12名の参加者がありました。

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安心できる空気の中、心が開き、自分の内面に焦点が当たることで、自分の本心が湧き出て、それぞれのその人らしさが発露してくるようです。

横浜のシェアハウスづくり、九州でのエコビレッジやコミュニティづくりなど、具体的な動きにもつながってきそうです。

参加者の感想です。

みんな内面にさまざまなものを抱えていることを知りました。それを徐々に解き放っていく様子がとても美しいと思った。

本当の人の姿はとてもシンプルなんだなあと感じました。

一人一人の話を聴いていくと、表面的な話から、心の深いところの話、そして、本人も気がづいていないであろう部分など、人の気持ちってどこまで広大なんだろうか…

さらにあの場にいる一人一人にそれらがあって、人と人が交流してるって、良くコミュニケーションが成り立つなぁと思いました。だからこそ面白いのかも?人との関係には限界がないなぁ……と。

持続可能な社会づくりカレッジは、好評につき第四期を9月~11月(2泊3日のプログラムを3回)で開催することも決定しました。

そして10月には、アズワンコミュニティを舞台に、おふくろさん弁当の事例を元にした、経営者向けのカレッジも企画中です。(http://jssc358.wix.com/college)

 

 自分の生き方を学ぶ場として ~「サイエンズ留学生」が続々と…

4月に福岡から移住してきた鶴島夕子さんに引き続き、アズワンコミュニティのベースとなっているサイエンズという考え方を学ぼうと「サイエンズ留学」に青年たちが訪れています。

パラグアイに3年いたRieさん、韓国からSherryさん、岩手のFuyumiさん、福岡のMaikoさんの4人が1ヶ月~1年ほどコミュニティに滞在して、自分らしく生きられるベースを培っています。

また、名古屋の公務員のKoji君は、平日は名古屋で勤務、週末はアズワンの青年として暮らし、サイエンズを学んでいます。

 

受入施設の充実

来訪者や滞在者も急増する中、落ち着いた環境の中で学んでいけるようにとの願いから、アズワン研修センターが用意されました。カレッジや探訪DAYの会場として活用されています。

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サイエンズ留学生のためにも、マンションを二部屋借りて、男子寮・女子寮としてスタートしました。

 

海外からの学びの場として

韓国でも新しい社会を求める動きが活発で、ソウルで新しい社会形態を試みているウドンサ(青年共同体)のメンバーなど諸団体からサイエンズやアズワンコミュニティが注目されています。

6月1日からはサイエンズスクールの「人を聴くためのコース」が韓国で開催されました。

日本からも6月~7月にかけて、二人の50代の女性、二人の青年も交流に行って来ました。

アズワンコミュニティと国際協定を結んでいるフリースクール、サンマウル高校からは、今年も7月21日から6日間、6人の学生がコミュニティ体験に来ます。

卒業生の2人の男子学生は約1ヶ月のコミュニティ体験に来ています。

ウドンサからは、Sherryさんが約1年の留学に来た他、7月、8月には探訪団が来る予定です。

また、ブラジルからは2名の男性が、8月末から10月初めまで40日間、サイエンズを学びにやってきます。

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自然・環境の学びの場として

すずかの里山の整備が進み、さまざまな年齢層に活用されています。先日は、5回目の炭焼き、夜焚きがあり、日本・韓国・ブラジルの若者とシニア世代が集い、鹿肉のバーベキューに舌鼓を打ちました。

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すずかの里山と街のはたけ公園で毎月企画されている「はたけで食べよう!里山で遊ぼう!」という親子企画は、地元の人に人気が出てきて、定員がすぐにいっぱいになり、キャンセル待ちをしてもらうような状況になっています。

自然界の魔法のチカラと、やりたい人がやりたい分やれるという安心で楽な雰囲気が、人気の秘密のようです。

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KIESS事務局の岩川さんも加わっている「楽しいエネルギー研究会」では、8月1日にソーラー竹ランプづくりのワークショップを企画しています。

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学びの場の背景 —アズワンコミュニティ

各地から様々な人の学びの場となってきているアズワンコミュニティですが、人間らしい暮らし=「お金のいらないコミュニティ」の実現に向けて、更なる研究と実践を積み重ねています。お金を介在しないで、欲求に応じて自由に得られる仕組み「コミュニティスペース JOY」も更に充実してきています。

惣菜や米・野菜の他に、日常に必要な物はたいてい揃うようになり、更にお菓子やお酒などの嗜好品も置かれるようになりました。

お世話をしてくれる人もいて(マミーと呼ばれています)、ほしい物を伝えると、できる範囲ですが、用意してくれたりします。ですから、「ほとんど買い物に行く必要がなくなった」とか、「家で調理するのは、自分がやりたい時だけでいいようになった」などの声をよく聴くようになりました。

買い物や調理の義務から解放され、自分のやりたいことに専念できるようになってきているのですが、各自の内面の変容にもつながってきているようです。

「JOY」を活用している男性の声を紹介します。

僕は、「お金」というレッテルが、モノの価値を見えなくさせている、ということを改めて「JOY」を使って気づき始めている。

 

いつの頃か、「お客様は神様です」という言葉の通りに、顧客獲得のために、客の方がモノやサービスを提供する側より偉くなってしまった。

 

モノやサービスがあふれて買い手市場になったからだろうか!?

 

売り手も買い手も、「お金」という「魔物」に取り付かれている。モノのない時代は、もう少し、モノのありがたさや、してくれる事の有り難さを感じていたと思う。

 

仕事も「お金」抜きには考えられなくなっている。

 

やはり生活するためには、「お金」は必要で、その「お金」を稼ぐために、嫌な事でもやりたくなるもので、我慢や義務も厭わずに、身を粉にしたりして、そうやってやった「仕事」は、神聖なものだったりするし、感謝もしてもらいたいものになる。

 

それほど、現代人の日常は「お金」の「魔物」に支配されている。

 

誰が何と言おうと、そういう「魔物」の支配からは、そう簡単には抜け出せないものだ、と、僕も思っていた。この「JOY」の話を聴くまでは……。

 

「日用品、野菜、お弁当、お惣菜、どれも自由に使っていいよ」と言ってもらった時から、自分が、これまでどういうふうに見ていたか、そういう事が明白になってきた。

 

「お金」を通して見ている間は、そのものの価値やそこに人がどう存在するか、というその真価にも目がいかないもので、自分の都合だけでしか見えないものだ。

 

「お金」の価格でモノの価値を判断するしかない。

 

でも、よくよく見つめてみると、「お金」というようりも、自分がここに存在出来るのも、この身体が維持出来ているのも、その一つが食べ物を食べているから、というのがある。

 

その食べ物は、自然界の贈り物でもあるし、その生産に関わり、提供し、調理し、そういう人の手が加わって、それを自分が食べて、この体が維持されているという事実がある。その実際の成り立ちに自然と目が向いていくのだ。

 

「お金」をとっぱらったら、何が見えてくるか、そこで見えてくる世界は…

その世界の入口が「JOY」でもあるんだな、と僕は思った。

 

だんだん、この「JOY」を使う中で、いろんなとらわれから解き放たれて、素直に物事が見えるようになっていくような予感もする。「お金」という観念から解放されていくことで、それまで、「お金」のため、と思って頑張れていたことがだんだんとチカラが抜けていくように…。

 

(おの まさし:サイエンズ研究所・KIESS会員)

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